世界に広がるピノ・ノワール 注目したいワイン産地 オーストラリア・ニュージーランド編

前回に続いて、世界に広がるピノ・ノワールについてワインを紹介していきます。この記事から読まれてもよいのですが、「今むかし編」もよろしければご覧ください。

 

見出しにあるように「オーストラリアとニュージーランドの注目したいワイン産地」について書いています、前半はワインの産地について情報誌より抜粋、後半は紹介した生産地の"ワイン"について銘柄を上げてご紹介しています。

25年程まえ、オーストラリアラリアの西に位置するワイン産地をいくつか訪れました。当時はまだこの辺りのワインが日本にあまり輸入されておらず、まさに「注目すべきワイン産地」でした。オーストラリア側も今後、力を入れてこの地域のワインを販売したかったようで、通訳兼案内は、西オーストラリア州政府の日本人の方が担当してくださいました。

 

ワイナリーを十数件訪れ、ワインメーカーさんとディスカッションするという、とても内容の濃いツアーでした。その中でも、キース・マグフォード氏のつくりだすモスウッドのピノ・ノワールの完成度の高さに度肝を抜かれ、醸造の魔術師とうたわれたケープメンテルのデヴィッド・フォーネン氏から、ワインつくりの現場を見せてもらい多くのディスカッションが出来たことは素晴らしい経験になりました。ワイン仲間はヴァス・フィリックスを訪れたとき「dream came true!」と口に出して、現場のスタッフを喜ばせました。

 

時間は流れ、注目するべきワイン産地は変化しています、今は…。

 

プレミアムなピノ・ノワールを育む
オーストラリア最南端のワイン産地
ギップスランド&タスマニア

 

 

ギップスランド

香り高く、紫色の果実を思わせる深み。そのようなピノ・ノワールを生み出すギップスランドは、メルボルンから南東の海岸沿いに広がるワイン産地だ。直線距離にして東西240㎞に及ぶ広大なエリアをカバーし約50の小規模ワイナリーが点在している。

面積は広いが生産量は西に隣接するヤラ・ヴァレーのわずか1%にすぎない。しかしながらこの地には、オーストラリアのおけるピノ・ノワールの第一人者であるバス・フィリップをはじめウイリアム・ダウニー、パトリック・サリヴァン、ホドルス・クリーク等、今日、オーストラリアのワインシーンを牽引する醸造家が名をつらねている。

ギップスランド・ゾーンはヤラ・ヴァレーと接する西ギップスランド、ニュー・サウス・ウエールズ州とのボーダーに近い東ギップスランド、そして海岸沿いの南ギップスランドの3つのエリアに分けられる。南はもっとも涼しく、特にエレガントで最上質のピノ・ノワール地域として知られる。年間降水量は他の2地域よりも多くなるが、降雨のパターンが予測しやすいため、ドライファーミングが可能だ。夏は30℃近くまで気温が上がるが、高めの湿度と、午後に吹き込む海からの冷たい風によりバランスが保たれる。

土壌は複雑かつ多様で、深くミネラル豊富な火山由来の土壌や、水捌けのよい砂質土壌が混在する。

 

 

タスマニア

クリーン&ナチュラルを体現
溌剌とした赤や黒の肉厚な果実と滑らかなテクスチャー、そしてクリーン&ナチュラルな味わい。タスマニアではまさに、この土地の自然そのものを具現化したようなワインが生み出されている。

伝統製法のスパークリングワインの名産地としても知られ、ピノ・ノワールの栽培比率は全体の約5割を占める。複数のクローンを使う生産者がほとんどで、早熟なディジョン・クローンの114や115が冷涼なを候に適しているらしく、多様されている印象だ。

産地は東海岸、北部、そして南部に集中、島内の土壌は驚くほど多様で、古代からの砂岩、玄武岩腐葉土、より新しい沖積土や火山由来の土壌などが見られる。特に古代からの岩質の土壌は、気温の下がる夜間にも熱を保ち、ブドウの成長期に色付きやアロマを助長すると言う。

ショウ&スミスのトルパドル、ベイ・オブ・ファイアーズ、現代美術館のMOMAが所有するムリエラ・エステート等の大手から、ブリー・ワインズ、ストーニー・ライズ、スターゲイザーといった小さなブティックワイナリーまで、約160の生産者が活動している。

 

 

ニュージーランド ワイタキ・ヴァレー
冷涼な気候と石灰質土壌が生む
複雑でエレガントなスタイル

ニュージーランドピノ・ノワールと言えば、これまでセントラル・オタゴを筆頭にその独特のスタイルや品質が話題を呼んできた。加えて、ここ十数年で着実に頭角を現してきているのがワイタキ・ヴァレー。この地が秘めるポテンシャルとは。

気候×土壌×クローン

ワイタキ・ヴァレーは、南島内陸部のセントラル・オタゴの北東で、東海岸カンタベリーより南に位置するノース・オタゴの一部である。南緯45度付近にある冷涼なワイン産地として、ポテンシャルの高さが注目を集めている(ブルゴーニュのボーヌは北緯47度)。

東には南極に繋がる南太平洋があり、冷風が入り込む。西には南アルプスが聳え、西からの雨風を遮断してブドウの生育期には雨が降らない。夏の日中には気温は上がるが夜間は冷え込み、長く乾燥した秋が美しいアロマを生み出す。

また、もうひとつ特筆すべきが石灰岩の存在だ。石灰岩土壌にはいくつもの利点がある。保水性に優れておりブドウが水に窮してはじめてブドウに水分を少量ずつ供給するため、そのストレスがタイトなスタイルを形成する。また、白色のため(黒土より)土壌温度がゆっくり上昇する。さらに、カルシウムが豊なためカリウムが少なく、酸を保つことが可能となる。

加えて、豊富な石は保温効果があるだけでなく日光を反射するため、日照時間が少ないこの地ではブドウの成熟に役立つ存在だ。

ニュージーランドで栽培されている主なピノ・ノワールのクローンは、1970年代に入ってきたUCD5(ポマール)、エイベル、80年代後半以降のディジョン・クローン(114,115,667,777)が挙げられるが、ワイタキ・ヴァレーは冷涼で晩秋の霜のリスクが高いため、比較的早熟なディジョン・クローンとポマールが適しているようだ。

徐々に増えているとはいえ、まだワイタキ・ヴァレーのワインを造る生産者は10件に満たず、その約半数は拠点を他地域の置いている。

栽培面積も、全体で59haと小さい。ピノ・ノワールについては、ニュージーランド全体で5,692ha栽培しているが、ワイタキ・ヴァレーでわずか29haだ。

しかし、冷涼気候と石灰質土壌が生み出す稀有なエレガンスを、マット・クレイマーは「ニュージーランドのシャンボール・ミュジニー」と評したという。

アロマが豊かで、スミレやラベンダー等のフローラルさ、クランベリーラズベリーといった赤い果実にスパイシーさが特徴だ。また、ハリがありエッジの効いた味わいと豊かなミネラル感がある。エレガントで芯が強い、まさにマージナルなワイン産地の魅力を堪能できる。

WANDS 2021年2月号より一部抜粋

 

さて、こういう記事を見ていると実際にワインを飲んでみたくなる訳ですが、ギップスランド・ゾーンで筆頭にあがられる、レジェンドのバス・フィリップのワイン、市場では現在売切れているようです。ウイリアム・ダウニー、パトリック・サリヴァンは購入可能な状況、品質も素晴らしいものですが、それなりの価格で1万円ほどいたします。ホドルス・クリークには先の生産者のようなプレミアムクラスもありますが、2500円前後で購入可能なスタンダードクラスもあります。

上記のワインの他にも、ギップスランドの先駆者のひとり、バス・リバー 1835ピノ・ノワールは冷涼感がありブルゴーニュ的なスタイルが楽しめますよ。

タスマニアのトルパドルは7~8千円ほど、ベイ・オブ・ファイアーズは3500円くらい、猫のワイン屋さんのおすすめは、ステファナ・ルビアナ エステート ピノ・ノワール。がっちりしているけれど冷涼な印象、ポマールやボーヌの一級ほどのポテンシャルを感じます。店頭でワイン販売をしていた時分によく販売していた銘柄、安心、安定の品質です。エステートは7千円ほどですが、プリマヴェーラなら5千円くらいです。

ワイタキ・ヴァレーのワインは数アイム日本に紹介されています。ワイタキ・ヴァレーを見出したとされるオスラー・ヴィンヤーズ、ヴァリ・ヴィンヤーズなど。    オスラー・ヴィンヤーズはキャロラインズが5~6千円、スタンダードクラスは4千円弱、ヴァリ・ヴィンヤーズのピノは6~7千円ほどです。


猫のワイン屋さんが運営する「konishi1924」では現在のところヴィテージワインを中心にワインを販売しており、上記でご紹介しましたワインは販売しておりません。お手数ですが、ワインはネットで検索し、お好きなショップからご購入くださいませ。バス・フィリップ以外はどのワインも市場で流通しています。コピー・ペースト出来るよう下記にまとめてみました。


オースタラリア ギップスランド

バス・フィリップ
イリアム・ダウニー
パトリック・サリヴァン
ホドルス・クリーク
バス・リバー 1835ピノ・ノワール

 

オーストラリア タスマニア
トルパドル
ベイ・オブ・ファイアーズ
ステファナ・ルビアナ エステート ピノ・ノワール
ステファナ・ルビアナ プリマヴェーラ ピノ・ノワール

 

ニュージーランド ワイタキ・ヴァレー
オスラー・ヴィンヤーズ ノースオタゴ キャロラインズ ピノ・ノワール
オスラー・ヴィンヤーズ ピノ・ノワール
ヴァリ・ヴィンヤーズ ワイタキ ピノ・ノワール