世界に広がるピノ・ノワール 今むかし編

本棚に情報誌が溜まってしまい、整理することに…
必要なところはファイルして残しておくために再度読み返しているととても興味深い記事を見つけました。

 

今、注目すべきピノ・ノワールの銘醸地
"旅のできない品種"も今は昔、世界に広がるピノ・ノワール

 

2年前の情報誌ですが、内容は今でも十分新しいかと思われます。自分の意見も交え、一部抜粋してご紹介していきたいと思います。

 

 

以下、記事より抜粋…

 

人々がブルゴーニュにほれ込む理由は、その魔訶不思議なテロワールの神秘性にもあるが、もうひとつ、ピノ・ノワールというブドウ品種の魅力によるところも大きい、艶めかしい芳香、しなやかな口当たり、馥郁たる余韻。知性に訴える品種がカベルネ・ソーヴィニョンとすれば、官能に訴える品種がピノ・ノワールである。

90年代の半ば頃まで、「ピノ・ノワールは旅のできない品種」とみなされていた。気候や土壌、いわゆるテロワールの許容範囲が狭いうえに、栽培、醸造での取り扱いにも気を使うため、原産地とされるブルゴーニュ以外にまともなワインは出来ないとされていたのだ。

事実その頃、ブルゴーニュ以外の土地でつくられていたピノ・ノワールの品質は、本家に遠く及ばなかった。一般に温暖な気候のもとで造られる新世界のピノ・ノワールは、熟し過ぎてフレーバーがジャムっぽく、甘く酸味に乏しいものが大半だった。一方、フランスのロワールやアルザスで造られるピノ・ノワールの赤、それにドイツのシュペートブルグンダーはどうかといえば、こちらはこちらで熟度が足りないのか、造りに気合いが入っていないのか、薄くて軽やか、俗な言い方をすればシャバシャバなワインばかりだった。

70年代には既にカリフォルニアで実力を発揮し、イタリアではスーパータスカンを生み、そして南米チリでも上手く育つカベルネ・ソーヴィニョンとは比べ物にならない適応能力の低さである。

 

 

時間は流れ

2015年の世界ブドウ・ワイン機構の資料を参考にピノ・ノワールの栽培面積を国別に見てみる。

1位 フランス 32,289ha
2位 アメリカ 25,004ha
3位 ドイツ  11,784ha
4位 モルドバ   6,521ha
5位 ニュージーランド   5,514ha
6位 オーストラリア   4,948ha
7位 イタリア   4,711ha
8位 スイス    4,207ha
9位 チリ     4,148ha
4位 アルゼンチン   1,988ha

フランスの1位は当然として2位はアメリカだ。その差は7000haあるが、フランスの3万2289haのうち約1万3000haがシャンパーニュであることを鑑みれば、スティルワインに限った場合、今やアメリカが最大のピノ・ノワール生産国である可能性は高い、4位のモルドバは想定外だが、3位のドイツは順当。5位にはニュージーランドがつけ、オーストラリア、そして9位にチリ、10位にアルゼンチンがランクインしている。

背景は何か?

新大陸では寒流の流れる海寄りや高緯度のエリア、または標高の高い場所等、より冷涼な土地にブドウ畑を拓いたこと。クローンの研究が進んだこと、さらに、ピノ・ノワール品種の特性に合わせた醸造スキルを持つ造れての増加が理由として上がられるだろう。一方、ブルゴーニュ以外の旧世界の場合、(アルザスは理由が異なるが)温暖化の影響で熟度が上がるようになぅたことが大きい。

WANDS 2021年2月号より

 

さてさて記事の冒頭の「昔」の辺り、1990年代の中頃に私はワインをまさに勉強していました。テイスティングしていたワインが1995年のものだったのを鮮明に覚えています。ドイツワインの授業で赤と言えば、代表的な産地はアールでした。ワインは上記にあるようにシャバシャバでとても美味しいとは言えず、価格を調べてみると安いとは言えません、「誰が買って飲むのかな?」と思った記憶があります。ドイツの赤ワイン産地はアール、バーデンから、今はファルツ、ラインヘッセンへと広がり躍動しているようです。

カリフォルニアワインを勉強し、さて実践、ピノ・ノワール仕入れ、お店で試飲をしてもらいながら販売するのですが、「甘ったるい」と批判されることがよくありました。自分では美味しいと思って仕入れ販売してい訳ですから、否定されれば気分は凹みますし、なにやら腹も立つのでした。それでも、素晴らしいワインは存在していて、キスラーのピノ・ノワールに触れた時は驚愕しましたし、オレゴンでジョセフ・ドルーアンが造るピノ・ノワールを味わった時は流石だと感動したものです。これらのワインは素晴らしい品質ですが価格も5千円以上でしたので、当時の我が店頭では試飲販売することは難しく、悔しい気持ちで店頭に立っていました。

あれから30年ほどの月日は流れ、市場も飲み手も、ワインを造る環境も大きく変化しました。変わらないのは、多くのつくり手さんの努力と情熱です。美味しいワインに出会った時、素直に美味しいと感じる気持ちを大切にしていますが、一方、どれだけの苦労をしてこの味になったのだろうと想像する時、リスペクトの気持ちは強くなるばかりです。

「世界に広がるピノ・ノワール」の記事は10ページに渡って掲載されていました。2年前はコロナ禍の影響でワインのインポーターさんの試飲会などがあまり開かれておらず、ワインの味わいを見ることが難しかったのですが、最近は試飲会も増えました。ワインは味わってこその世界、現在のワインの味わいが鮮明になったことでこの記事がより面白く感じられたのかもしれません。

次回は注目の産地からワインまでご紹介していきますのでお楽しみに…。